抽象化は自分自身にも向けられる――哲学・自己理解・福祉思想へつながる思考
目次
抽象化というと、歴史や兵法のような大きなテーマに向けられるものだと思われがちです。
けれど私は、抽象化は外の世界だけでなく、自分自身を見るときにも必要な力だと思っています。
自分を少し引いて見るということ
人は、自分の感情や目の前の出来事に巻き込まれていると、全体像を見失いやすくなります。
だからこそ、自分を少し引いて見る視点が必要になります。
自分はいまどんな立場に置かれているのか。
何に反応しやすいのか。
どんな背景を背負って、どんな判断をしているのか。
何を恐れ、何を求めているのか。
こうしたことを考えるとき、私たちは自分の感情だけでなく、
自分を含めた構造全体を見ようとする視点を持つことができます。
私はこの感覚を身につける中で、出来事を単なる感情の問題ではなく、流れや関係性の中で捉えられるようになってきました。
哲学から学べること
哲学というと、難しい言葉や抽象的な概念ばかりで、とっつきにくいと感じることがあります。
しかし本来、哲学は空中に浮いた言葉ではありません。
それぞれの哲学者が、その時代の社会、宗教、政治、技術、暮らしの中で考え抜いた結果として生まれたものです。
だから哲学を学ぶときに大切なのは、言葉の難しさに圧倒されることではなく、
「その思想がどんな時代背景から生まれたのか」を見ることだと思います。
すると、そこには二つのものが見えてきます。
一つは、その時代に強く依存していて、現代にはそのまま通用しにくい部分。
もう一つは、時代を超えてもなお、人間理解や社会理解に役立つ部分です。
この二つを見分けることができると、哲学は単なる知識の飾りではなく、現代を考えるための道具になります。
考えを広げる力と、現実に照らし直す力
知識をつなげる力には、大きな可能性があります。
異なる知識を結びつけることは、創造性の源にもなります。
ただし、その結びつきが現実の観察や検証を欠いてしまうと、説得力のない飛躍になってしまうことがあります。
本人の中ではきれいにつながっていても、他者から見ると根拠が薄い。
関連の弱い情報を無理につなげてしまい、現実との接点を失ってしまう。
そうしたことは、思考の中で十分に起こりえます。
だからこそ、知識をつなげる力には常に、
「現実に照らし直す作業」が必要だと思います。
・その考えは、現実の情報と結びついているか
・自分だけが納得している話になっていないか
・他者にも説明できる筋道があるか
・新しい情報によって修正できる仮説として持てているか
こうした問いを持つことで、抽象化は独りよがりな空想ではなく、未来を考えるための力になります。
福祉思想へつながる理由
私がダイバーシティやインクルージョンに深く惹かれるのは、そこに人類が積み上げてきた知恵の結晶を感じるからです。
歴史の中では、多くの戦争や対立がありました。
その痛みを経たうえで、違いを力で押さえ込むのではなく、対話と協調によって共に生きる方向へ進もうとしてきた流れがあります。
人種、文化、価値観、生活様式の違い。
考え方、感じ方、成長の仕方の違い。
そうした違いを、排除ではなく理解の対象として捉えようとする思想が、ダイバーシティです。
そして、その違いを抱えたまま共に生きる社会を目指す考え方が、インクルージョンです。
私は、兵法や哲学のような抽象的な知識をたどりながら、最後にはこの福祉思想へとつながっていくことに強い意味を感じています。
おわりに
私が抽象化を通して学び取りたいのは、単なる知識の整理ではありません。
目の前の出来事を、時代を超える教訓として受け取り直し、これからの社会や支援や生き方に応用していくことです。
多様な神経、多様な感じ方、多様な生き方が尊重される社会へ。
その理解が、少しずつでも広がっていくことを願っています。