孤独な三つ子育児の果てに懲役刑。反証のカギはムーミンの国2。

2018年1月に愛知県豊田市で、3つ子のお母さんが孤独な子育ての末に、産後うつを患い次男を暴行死させてしまいました。

翌2019年3月15日の名古屋地裁の判決によって、「責任能力があった」とされて、3年6カ月の懲役刑が言い渡されました。

私は、この判決を「ムーミンの国」をカギに、反証から判決を覆すアクションに繋げたいと思います。

この判決について、世間の受け止めとしては、女性目線の共感と同情が広がる一方で、母親への非難、夫への非難などの意見もあります。

残念ながら「日本の子育て観」には、「母ならなんでも耐えて当たり前」という冷たさがあるのだと思います。

その「日本の母親のワンオペ育児」に外国人がびっくりした!!話から

先進諸国の中で、アレが最低なせいで「日本のワンオペ育児」が行われていることをお伝えしていきます。

●男が子育てを「お手伝い」できたら「イクメン?」

2019年2月2日発行のニューヨークタイムズで日本のワーキングマザーの生活が驚きを持って伝えられました。

日本のワーキングマザー妻の過大な負担、夫の過少な支援というタイトルで、働きながら子育てをする母親の日常が報じられました。

仕事をこなしながら、早朝から芸術的なお弁当をつくり、

保育施設への送迎を行い、掃除をこなし、

栄養バランスに考慮されたクオリティの高い夕食をつくり

こどもをお風呂にいれて、洗濯を物干し竿にほし、

保育連絡帳に詳細な記録をつけて、やっと自分の時間が持てる。

夫からの家事・育児支援は乏しく、平日はほぼ母親一人で激務をこなし続けるワンオペ育児が、驚異的に報じられました。

日本人から見ると「まぁ頑張ってると思うけど、普通だしもっと大変なとこあるよね」という感覚かもしれません。

しかし、この「働く母親の日常」は海外の方にカルチャーショックを与えるほど普通ではないハードワークなのです。

ニューヨークタイムズの記事では、その原因が、男性が異常な長時間労働によって、家事・育児に参加が出来ず、母親に背負わされていると問題提起されています。

戦後の日本社会では「男は外ではたらき、女は内をまもる」という価値観がありました。

日本のワーキングマザー妻の過大な負担、夫の過少な支援

引用元: The New York Times  Feb. 2, 2019

●「男は外だけじゃダメ、女も内ばかりにいられない」時代

しかし、それが可能であったのは「終身雇用制」などに支えられた、就労、賃金保障があってこそでした。

現在の不安定な雇用と低賃金政策の元では、男性一人の稼ぎでは生活が成り立たず、共働きが当たり前となっています。

その社会構造、労働環境の変化に対応をしない育児環境が、母親を過酷なワンオペレーション育児に駆り立てて、常にハードワークが強いられているのです。

そして、日本のはたらき方、母親に偏る育児負担は、先進諸国の中では異常なことなのです。

国際的な、先進主要諸国連合のOECD諸国の比較を通じて、日本の働き方の偏りが当たり前ではないことがわかります。

●先進諸国の中で最下位の日本男性の育児時間

OECDとは、先進35国が加盟をして、世界の経済活動の推進、貿易の自由化、発展途上国を援助する役割を果たしています。

OECD加盟諸国

日本の長時間労働、理不尽なワンオペ育児について、企業や政治家がどの様に言い訳をしても、このOECD基準で比較すると客観的な指標が浮かびあがります。

日本の男性が育児にかけられる時間はダントツの最下位です。

OECD加盟国比較のデータベース「OECD.Start」で15歳~64歳の男性の、仕事以外の無給時間(育児を含む)を検索した結果。

日本のトータル年数41年に対してトップのデンマークは186年と、4.5倍もの差があるのです。

先進国トップの国は日本の男性の4.5倍子育て等に参加しているんですよ。

日本のイクメンってどんなもんなの?って感じです。

2倍ぐらいなら文化の違いとか個人差とか言えてもここまで歴然とした差があると、日本の男性が子育てに参加が出来ない社会構造があると言えますね。

OECD.Set  15~64歳 男性 無給時間 国際比較

OECDデータベース 男性が育児に充てられる時間(無給時間)比較

引用元:OECD。Start 

ニューヨークタイムズの同記事では、この社会構造の偏りによって

有能な女性の働き手の社会進出をはばみ、国の経済発展、国際的な競争力を落としていると指摘されています。

そして、それら原因である長時間労働にはもはや弊害しかないとまで書かれています。

ただ、そんな問題提起ばかりをしても、「じゃあ、どうしたらいいの?」という話になると思います。

では、逆に男女参加の子育てが当たり前の国を紹介します。

●子育て支援 解決のカギはムーミンの国

「ムーミン」を産んだ国「フィンランド」です。

フィンランドはOECD加盟国が15歳を対象に実施する学習到達調査で、読解力、科学的リテラシーが1位となったことがあり、その教育システムに世界から注目が集まっています。

その要因の大きな2点は

「男女同権の子育てが出来る労働環境」と

「産まれてから就学まで支え続ける保健システム(ネウボラ)」

にあります。

●イクメン・・・?は当たり前 家事・育児は男女同等の仕事

フィンランドの家事・育児は、男女が出来ることを尽くすことが当たり前です。

男女関わらず、手が空いてる時に家の用事を行い、

男性も料理をして、掃除・洗濯をして、保育所への送迎、教育、入浴、寝かしつけなどをして、女性同等に家事・育児を行うことが当たり前になっています。

それが可能な土壌が、節度ある労働環境にあります。

女性は平均で16時、男性は平均で17時で仕事が終わります。

若干の男性勤務の長さはありますが、日本ほど極端な男女差がなく、家事分担も均等に出来るのです。


【フィンランド】伸び伸び遊ぶ子どもたち ― 夫婦での育児を支えるワーク・ライフ・バランス ― フィンランドの家庭訪問調査より

引用元:ベネッセ チャイルドリサーチネット

このことは、男性に仕事を理由に家事・育児から逃れる言い訳を与えてくれません。

「外でしっかり働いて養ってやってるんだから、家の事は女がやってくれ!」

みたいな事が間違ってもほざけない様になっているのです。

私の苦い経験から言うと、かつての私は家事の苦手さに向き合わず仕事を言い訳にしていたことがありました。

ADHD特性を持つ私は、家事や片付けが苦手です。

こどもが出来るまでは、自分が苦手な家事を妻に行って貰って生活が成り立ち、仕事が出来ていました。

ところが、こどもが出来ると自分も家事を自立してこなしながら、育児スキルを身に着ける必要が出て来ました。

そのままの自分では、、、自分を変えなければ、、、

まともな育児環境をつくっていけない事に、前妻のキャパシティを越えるまで気づきませんでした。

いつの間にか前妻との心の距離が空き、離婚に至ってしまいました。

関連記事:発達障害者の家庭問題、子育て困難

リンク先:発達障害者である専門職のブログ

自分の壁をのりこえないといけないと自立した生活をしながら、育児に向かえない人もいるのです。

しかし長時間労働という社会は、本来なら自分と向き合い壁を越えないといけない人には、逃げ場にもなる事もあるのです。

一方、母親はこどもへの愛情と責任で壁を乗り越えていかれます。そこに、男女の家事、育児スキルの格差がうまれてくること感じます。

●3つ子のお父さんは何をしていたか?

話を豊田市の事件に戻します。

その際に「夫は何をしていたか?」という疑問が出てくると思います。

実は半年間の育児休暇は取得をされていたのです。

ただ、こどものあやし方、おむつの変え方などに失敗してしまい、育児能力を身に着ける間もなく仕事に戻らざるを得ませんでした。

この点で、夫個人の育児能力を責める声もあります。しかし、私は最初の家庭生活の時に失敗した育児経験から、夫の立場に共感ができる部分があります。

いきなり、うまくおむつ替えや、こどものあやし方、ミルクなどをやってくれと言われて、誰でも出来るものではありません。

ましてや、3つ子の育児をバリバリと肩代わり出来る様な育児スキルは、中堅の保育士でもなければなくて当然だと思います。

そして、本当に忙しくて即戦力を求めている母親には、丁寧に育児のチュートリアルをしてあげる余裕もなかったのでしょうか?

つまり、夫が育児能力のギフテッド者でもない限り、3つ子の出生時点から育児サポートは必要とされていたはずなのです。

●産まれてから学校に行くまでを、支え続ける保健システム「ネウボラ」

日本の育児支援は出生時から保健所で把握をされ、保健師の家庭訪問などが行われます。

しかし、豊田市では把握していながらも、出生時訪問から子育て支援には、繋がらなかったという事になります。

フィンランドでは、産まれてから小学校入学まで、一貫した手厚い育児支援があります。

フィンランドの子育て支援はネウボラというところで行っています。

出生からの支援と段階的な乳幼児健診など、保健所と同じ様ですが更にもう3歩ほど踏み込んだ支援を行ってくれます。

●第2の家族が保育サービスをつないでくれる

ネウボラでは、相談をされた内容をもとに、他の支援サービス、保育園、就学支援施設、学校などと情報を共有しながら、出生から連続した支援を受け続けられるのです。

しかも、地域ごとの担当保健師がほぼ変わることなく、家族の様な安心感を持って長期的支援が受け続けられるのです。

一方、日本の公務員は異動が多く、慣れた頃に担当がコロコロ変わってしまうことで、問題が潜在しているケースが引き継がれずに置き去りにされることも少なくありません。

特に、一番大きな違いは保育入所活動(保活)などしなくても、必要に応じて保育施設への入所が出来るのです。

保育施設への入所ということが、単なる託児ではなく育児支援システムの中核になるという事は前回お伝えさせて頂きました。

いくら、ネウボラの地域支援力が細かくても具体的な保育サービスの受け皿と連携をして支援をされているとも言えます。

まして、保育施設に代わる福祉サービスがない日本では、なおさら必要なことで、考えてみれば、当たり前のことだと思います。

一見すると日本の保健所もネウボラの様な支援の形式を追っているに見えます。

 

しかし現段階では

出生時に把握した情報から困難家庭に手を伸ばす支援はなく

担当者もコロコロ変わり、実際の育児支援は不足した受け皿で

放置されてしまう人がいる点を見ると

ヨーロッパの福祉スタイルを真似た「はりぼて」の様に思えます。

地域の子育て情報は行政のPC端末にデータこそ残っていても、ワーカー・保健師個人の頭で把握されているわけではなく、相手から相談があった時にかろうじて引っ張り出して来る受け身な情報でしかないのです。

その為に、困りきってSOSも出せない方に対して、事前に手を差し伸べられずに、事件後に「そういえば、こんな訴えをしていた」という記録が見返されて、対応を責められるネタになるのです。

ただ、これは行政のワーカー・保健師「個人の責任」ではなく国として仕組みづくりの途上という福祉制度の課題です。

●豊田市の三つ子事件は個人の責任なのか?

豊田市の3つ子事件は、子育てを支える繋がりが地域になく、夫婦で協力して育児が出来る時間もなく、不足を補う支援もない社会構造の中で起こった悲劇です。

あらためて、名古屋地裁の判決についてみなさんは、どう思われるでしょうか?

「生命・身体に対する危険性が高く、悪質」

「身勝手で、しかも過剰な反応」として、

「執行猶予をつけるほど軽い事案ではない」と、3年6ヶ月の懲役判決が下された判決。

この3つ子のお母さんは、

3人のこどもに1日8回ずつ、

3時間おき計24回の授乳を続けて、

1時間程の睡眠しかとれていない状況でした。

裁判官は「産後うつに罹患するなかで賢明に子育てをしてきた」という一方で

「責任能力があった」としましたが、

責任能力があればエンドレスに続くワンオペ育児を耐え続けるのが普通のことでしょうか?

実は行政にも窮状は伝えられていました。

行政の保健師には

「次男が昼夜を問わず泣くのが大変」

「長男と次男の口を塞いだことがある。」

と伝えられていたのです。

それぞれ、別の保健師に伝えたことですが行政の情報としては一連の記録が残っていたはずです。

そして保健師からは、ファミリーサポート事業が案内がされていました。

しかし、申請にはサポーターの方との顔合わせ面談を要します。

人と会うことが億劫となる「産後うつ」を抱えて、少しでも休息の時間を要する方に、そのハードルは低くはありません。

また費用負担も安くはありません。豊田市の場合、1人1時間700円なので、3人で1時間2100円、半日の6時間預けると12,600円かかります。

産後うつを抱えた、3つ子の子育ての火事場を支える制度としては、到底マッチしたサポートではありません。

困難が訴えられ、クライシスのサインを出していた方に対して、分な手立てを打てなかった行政に責任はないでしょうか?

結果として起こってしまった「産後うつ」の悲劇を

個人の「責任能力があった」と突き放すの判決は

過労による「うつ」自殺を自己責任にする、ブラック企業と同様ではないでしょうか?

3つ子を産んだことが自己責任とするなら3つ子を産み育てることも出来ない国として先進国の名を返上した方がいいと思います。

その地域に生きる人の命を支えるのが、地域住民の税金の拠出で運営されている行政の責任であり、先進国の証だと思います。

ネウボラであれば、早期の段階で母親のメンタルケアの必要性を把握して、積極的に介入し、保育サービスの提供が行われいたと思います。

児童虐待の対応も含めて、日本の子育て支援の仕組みに、まだまだ不足があるはずです。

この事件は、他児を授かれば、どこに居ても、誰にでも、起こりうる事件であり、

この問題を「個人の責任」に帰結させてしまえば、いつまでも産後うつ自殺、事件、児童虐待問題は起こり続けると思います。

いつまでも、フィンランドの様な子育て支援制度には発展していかないのではないでしょうか?

●反証のカギがムーミンの国としたワケ

私が「ムーミンの国」フィンランドを引き合いに出したのは、SEO検索ワードを意識したため

日本の目指す子育て支援の不足を証明する皮肉な理由があります。

実は日本の育児支援制度は、すでにネウボラをモデルとして、再構築にカジをきっているのです。

そして、日本版ネウボラ「子育て世代包括支援センター」は、この事件の前年2017年4月1日には法定化されていたのです。

国における母子保健対策 ~特に子育て世代包括支援センターについて~

引用元: 厚生労働省 子ども家庭局 母子保健課

つまりこの事件は「日本版ネウボラ」を、フィンランドの子育てを目指すと宣言している中で、セーフティネットから漏れ起こった事件であり、その責任を個人の責任にされようとしているのです。

それでは、ネウボラは目指せませんよね!!

仕組みづくりの途中であったとするなら、まず行政責任を認めて反省するところから出発しなければ、日本の子育て支援はいつまでもOECDの底辺を這い続けるでしょう。

●日本の育児支援から見直す判決を!!

私はこの事件の教訓を、

社会の育児支援に対するターニングポイントとして見直す意味を込めて、判決への抗議をしたいと思います。

具体的にはネット署名という形です。

ネット署名にも法的な効力はあり

過去には「ひとり親家庭の児童扶養手当の増額」や「パート労働者の育休要件の緩和」などに効果を発揮しました。

今回は、私が呼びかけ人という形ではなく、すでにSNS上で広がっている請願署名に賛同する形です。

以下の署名にご協力いただける方は、ぜひお手を貸して頂きたいと思います。

Change.org: Reasons for Signing

change.org 署名「豊田市のみつご虐待死事件の母親が子育てしながら罪を償えるように、執行猶予を求めます!」

三つ子のお母さまの名誉と親子関係をまもると共に、日本の子育て支援の仕組みづくりに一石を投じる機会にしたいと思います。

 


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