視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚――感覚ごとの困りごとと、少し楽にする工夫

感覚過敏サムネ 全投稿
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前回の記事では、感覚過敏と感覚鈍麻の基本について整理しました。

関連記事:
感覚過敏・感覚鈍麻とは?発達障害の感覚特性を『どろろ』百鬼丸から考える

感覚過敏は、刺激が入りすぎてしんどい。
感覚鈍麻は、必要なサインが入りにくくて危ない。

今回はその続きとして、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、そして身体感覚について、もう少し具体的に見ていきます。


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視覚――光、色、人混み、動きの多さ

視覚の過敏があると、光や色、動きの多さが負担になります。

蛍光灯の光がしんどい。
白い紙の反射がまぶしい。
人混みの中で、動くものが多すぎて疲れる。
スーパーやショッピングモールの情報量で頭がいっぱいになる。

こういう人にとって、外出は単に「歩く」だけではありません。
目から入る情報を処理し続ける作業になります。

一方で、視覚の鈍さや情報処理の難しさがあると、見落としやすさにつながります。

目の前にあるものに気づかない。
探し物が苦手。
人の表情の変化に気づきにくい。
段差や障害物への反応が遅れる。

視覚といっても、単に「よく見える」「見えにくい」だけではありません。
光の強さ、色の刺激、動きの多さ、視界に入る情報量。
それらが重なることで疲れ
が出ます。

見る力や情報の処理については、こちらの記事でも触れています。

関連記事:
見る力を育てるビジョントレーニング|発達支援の視点から考える視覚の使い方


聴覚――生活をじわじわ削る音

聴覚過敏は、生活の中でかなり負担になりやすい感覚特性です。

大きな音だけが苦手とは限りません。
むしろ、周囲には普通の音に聞こえるものが、本人にはずっと刺さっていることがあります。

冷蔵庫の音。
換気扇の音。
時計の音。
キーボードを打つ音。
人の話し声。
テレビの音。
食器が当たる音。
学校や職場のざわつき。

必要な声だけを拾えない。
会話に集中したいのに、横の音が入ってくる。
休みたいのに、生活音が消えない。
寝ようとしても、小さな音が気になって眠れない。

周囲から見ると、本人はただ不機嫌に見えるかもしれません。
でも実際には、音に削られているだけかもしれません。

私自身も、静かにすれば楽になるとは限りませんでした。
むしろ、静かすぎることで小さな音が気になってしまうことがあります。

そのため、寝るときに音楽やテレビを流していた時期があります。
完全な無音にするのではなく、一定の音を置いておくことで、気になる音を紛らわせる。
これは、私にとってかなり実感のある対処法でした。

聴覚過敏への対処は、「音を消すこと」だけではありません。
自分にとって楽な音の入り方を探す
ことも大切です。


嗅覚――においは逃げにくい

嗅覚過敏も、生活ではかなりきつい感覚です。

香水。
柔軟剤。
タバコ。
食べ物のにおい。
体臭。
車内のにおい。
病院や施設の独特のにおい。

においのつらさは、説明しにくいわりに逃げにくい。
耳ならイヤーマフや耳栓があります。
目ならサングラスや帽子があります。
でも、においはその場の空気ごと入ってきます。

私は、嗅覚や味覚は比較的鋭い方だと思っています。
食べ物の鮮度や、味の違い、においの変化には気づきやすい方です。

それは困りごとにもなりますが、良い面もあります。
料理をするとき、味のバランスやにおいの変化に気づきやすい。
食材の状態にも反応しやすい。

感覚の鋭さは、生活の中で負担にもなるし、強みにもなります。
ここが感覚特性の難しいところであり、面白いところでもあります。


味覚――偏食だけで片づけると見えなくなる

味覚の過敏は、偏食として見られやすいです。

でも、本人にとっては「好き嫌い」だけではありません。

味が強すぎる。
苦味や酸味が耐えられない。
食感が無理。
混ざった味が苦手。
温度が少し違うだけで食べにくい。

特に子どもの場合、周囲からは
「わがまま」
「食べず嫌い」
「甘やかし」

と見られがちです。

もちろん、すべてを感覚特性だけで説明する必要はありません。
でも、本人が本当に苦痛として感じている場合、無理やり食べさせることは逆効果になることもあります。

一方で、味覚が鋭いことは強みにもなります。
味の違いに気づける。
調味の変化が分かる。
自分に合う味を探せる。

しんどさと強みは、同じ場所から出ていることがあります。


触覚――服のタグ、縫い目、肌ざわり

触覚過敏は、かなり生活に密着しています。

服のタグが痛い。
縫い目が気になる。
靴下の感触が苦手。
特定の素材の服が着られない。
髪を切るのが苦手。
爪切りや歯みがきがつらい。
人に触られるのが苦手。

周囲からすると、些細なことに見えるかもしれません。
でも本人にとっては、ずっと皮膚に刺激が残り続けるようなものです。

服は一日中身につけます。
だから、肌ざわりが合わない服を着ているだけで、ずっと少しずつ削られます。

触覚鈍麻の場合は、逆に痛みやケガに気づきにくいこともあります。

感覚が鋭すぎても困る。
鈍すぎても困る。
身体の感覚は、生活そのものに直結しています。


その他の感覚――身体の位置、バランス、疲労、空腹

感覚特性は五感だけではありません。

身体の位置や力加減に関わる感覚。
揺れやバランスに関わる感覚。
空腹や満腹。
疲労。
眠気。
暑さ寒さ。
痛み。

こうしたものも、生活には大きく関わります。

力加減が分かりにくいと、物を強く握りすぎたり、人との距離感がつかみにくかったりします。
バランス感覚に特徴があると、揺れる遊具が好きすぎることもあれば、逆に非常に苦手なこともあります。
疲労感が分かりにくいと、限界を超えるまで動いてしまうことがあります。

本人は普通に過ごしている。
でも、体は限界を超えている。

このズレは、後から一気に崩れる原因になります。

身体感覚や運動との関係については、こちらの記事でも書いています。

関連記事:
体を動かすと変わる?発達特性と身体感覚のつながり


感覚のしんどさは、一つずつ見た方がいい

ここまで、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、そして身体感覚について見てきました。

同じ「感覚過敏」といっても、しんどさの出方はかなり違います。
だからこそ、対処も一つではありません。

軍師:呂尚 (太公望)
軍師:呂尚 (太公望)

「環境調整は大事です。しかし、“すべての刺激をなくす”方向に走ると、生活そのものが窮屈になります。」

将軍:武吉
将軍:武吉

「でも、我慢大会に戻るのも違うだろ。全部まとめて敵扱いするんじゃなくて、“真実はいつもひとつ”で、まず何がいちばん刺さっているのかを見つける方が先だ。」

隠密:楊戩
隠密:楊戩

「見た目はおっさん、中身はこどもかって、ぐらいの雑な例えやな。」

音なのか。
光なのか。
においなのか。
触覚なのか。
身体の疲れやすさなのか。

「全部が無理」で終わらせず少しずつ見ていくことで対処の方向も見えやすくなります。


感覚の鋭さは、弱点だけではない

感覚の鋭さは、しんどさにもなります。

でも、それだけではありません。

私は、嗅覚や味覚は比較的鋭い方だと思っています。
においの違い。
味の変化。
食べ物の鮮度。
空気の違和感。

そういうものには気づきやすい方です。

もちろん、それは疲れやすさにもつながります。
においが強い場所ではしんどい。
音が重なると疲れる。
人の空気の変化も拾いすぎる。

でも、相談支援専門員として仕事をする中では、この感覚の鋭さが役に立っている部分もあります。

人の表情の変化。
声のトーン。
言葉に出ていない違和感。
場の空気の変化。
本人が無理をしている感じ。
家族や支援者の間にある微妙なズレ。

そういうものを拾いやすい。

敏感さは、弱点にもなる。
でも、扱い方によってはストレングス
にもなる。

これは、きれいごとではなく、かなり実感に近い話です。

しんどさと強みは、同じ場所から出ていることがあります。


我慢ではなく、調整していい

感覚過敏があると、つい
「慣れないといけない」
「我慢しないといけない」
「気にしすぎと言われるから黙っておこう」

となりがちです。

でも、削られ続けている状態で我慢だけを続けるのは、かなり危ういです。

ここで大事なのは、
自分に合う調整方法を持つこと
だと思います。

音なら音への工夫。
光なら光への工夫。
肌ざわりなら素材の工夫。
身体感覚なら動き方や休み方の工夫。

全部を一気に変える必要はありません。
一番しんどい刺激から、少しずつ調整していけばいいのです。


刺激に合わせて、道具を選んでいい

同じ「感覚過敏」といっても、しんどさの出方はかなり違います。
だからこそ、道具の選び方も一つではありません。

現王:武王
現王:武王

「すべての刺激を一度に受け止める必要はない。音には音の守り方があり、光には光の避け方がある。」

将軍:武吉
将軍:武吉

「そうだな。じっちゃんの名にかけて言うなら、犯人は“全部”じゃなくて、“いちばん刺さるやつ”だ。
音が刺さるならイヤーマフや耳栓、ノイズキャンセリング。光がしんどいならサングラスや照明の工夫。
まずは、しんどい刺激に合わせて道具を選べばいい。」

隠密:楊戩
隠密:楊戩

「あんたのじっちゃん、名探偵やなくて農民やろが……なんで感覚特性の話で事件簿はじまっとんねん。」

しんどい刺激があるなら、それに合わせた守り方を考えていい。
道具を使うことは、甘えではなく、自分の生活を整えるための手段です。


感覚過敏グッズを探している方へ

感覚過敏への対処は、音だけではありません。

光。
におい。
肌ざわり。
生活音。
外出先の刺激。
家の中での疲れやすさ。

こうしたものをまとめて見直したい方には、こちらの記事が入口になります。

関連記事:
感覚過敏で疲れやすい人へ|音・光・におい・肌ざわりを少し楽にする暮らしのセット

この記事では、感覚過敏で疲れやすい人に向けて、暮らしの中で使いやすいグッズや工夫をまとめています。
「どれか一つを買えば解決」ではなく、生活の中で少しずつ負担を減らすための入口として読んでもらえればと思います。


音のしんどさが強い方へ

特に聴覚過敏がある方は、音への対策を少し具体的に考えてもよいと思います。

音を全部遮ればいいわけではありません。
遮りすぎると不安になる人もいます。
耳に入れるタイプが苦手な人もいます。
逆に、しっかり遮った方が安心する人もいます。

耳栓にも種類があります。

デジタル耳栓のように、必要な音を残しながら周囲の騒音を抑えるタイプもあります。

関連記事:
デジタル耳栓とは?音を完全に消さずに、しんどさを減らす選択肢

一方で、シンプルに音をやわらげたい場合には、スポンジ耳栓のような選択肢もあります。

関連記事:
スポンジ耳栓の使い方と選び方|音の刺激をやわらげる身近な対策

音の対策は、強く遮ることが正解とは限りません。
学校、職場、外出、寝る前。
場面によって合うものは変わります。


まとめ

感覚特性は、ただ困りごとを並べるための言葉ではありません。

どの感覚がしんどいのか。
どの感覚が鈍いのか。
どの感覚が、逆に強みとして働いているのか。

それを見ていくための手がかりです。

感覚の鋭さは、弱点にもなります。
でも、扱い方によっては強みにもなります。

大事なのは、
「気にしすぎ」と片づけないこと。
「全部我慢する」方向に戻さないこと。
そして、少しでも楽になる方法を探していいと考えることです。

感覚過敏は、消すものではなく、理解して、調整して、付き合っていくもの。

まずは一つ、自分の生活が少し楽になる工夫を見つけるところからで十分です。

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    発達障害の診断を受け、人生を振り返り自らの生き方を模索した1年半の葛藤を記しています。当事者、専門職の視点で発達障害について学び、福祉サービスを利用する中で、障害受容と自分らしく生きる道が見えて来ました。
    ライトに書くつもりでも、時折、複数の知識が直結する「ニューロダイバシティ現象」が起こり奇跡の様な記事が生まれています。

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