ミュージシャン・俳優・声優として、マルチに活躍されていたピエール瀧さん(51)が、3月12日麻薬取締法で逮捕をされました。
コカインを使用しているという情報を基に私宅が捜索されて尿検査で陽性反応が出た上で、容疑も認めているということです。
3月13日現在では、自宅からコカインは見つかっていませんが、丸められた韓国ウォン紙幣が見つかり、コカイン吸入の際に使用した可能性があるとして、付着物が鑑定されています。
俳優として重要なキーマンとなるポジションで、NHK大河ドラマ「いだてん」や、北野武監督作品など、善良な役から凄みのある悪役まで、安定感を持たれていた俳優さんなので衝撃も大きくなっています。
ミュージシャン活動としては、電気グルーヴ結成30周年を迎えて記念ツアーの真っ最中でした。
また、世界的な大ヒットと「アナと雪の女王」では、ゆるく純真なオラフ役を演じ、こども達に笑顔をもたらせて、物語に安息を与える軽妙な演技をされていました。
ネット上では批判から悪ノリにも発展して、ウィキペディアのピエール瀧さんの情報に悪意ある書き換えが続き、批判が殺到しています。
その一方で、なぜこの人が?
という、信じがたい声もあがっています。
真面目で堅っくるしく生きているイメージはなく、明るく奔放に振舞っているピエール瀧さんなら、薬物などを使わなくても人生を充実させていそうな印象があります。
●薬物に依存しやすいタイプは?
実際にマウスを使った実験では、麻薬に依存をするタイプ、距離を置けるタイプが、生活スタイルによって変化する可能性が示されています。
1980年にサイモン・フレーザー大学で行われた「ネズミの楽園」と呼ばれる実験です。
一方のグループのマウスには、自由な行動や広い場所での活動を、雄雌が自由に交流出来る環境が与えられ。
他方のグループのマウスには狭い居室と限定された行動に制限をして、一匹づつ檻の中に入れられました。
つまり、「リア充マウス」と「ぼっちマウス」に分けられたのです。
その両方のマウスに、「水」と「モルヒネ水」を用意して57日間行動を観察しました。
その結果、
「リア充マウス」達は、友達と遊んだり、彼氏彼女でじゃれ合い、なかなか「モルヒネ水」を飲もうとしなかったことに対して、
「ぼっちマウス」は、一日中モルヒネ水を飲んだくれてトリップしていたのです。
その様に麻薬に依存しきって薬物依存症として行動不能になる人もいれば、依存をしきらずにライトな距離感で使用する人もいるそうです。
薬物との距離感・依存度の度合いは、現実の充実感、生活への閉塞感で左右をされます。
現在の情報からでは、ピエール瀧さんの薬物の入手ルートや使用歴は明らかになっていませんが、もしかするとフランクに長期的につきあっていたのかもしれません。
しかし、発覚をすると地位も名誉も仕事も失うリスクを背負いながら、薬物を辞められなかったことに、依存性のおそろしさが表れています。
●逮捕をしてくれてありがとうございます。
2016年に逮捕をされた、元俳優の高知東生さんは、逮捕時に麻薬取締官に対して、「来て貰ってありがとうございます。」と話されたそうです。
国立精神・神経医療研究センター、薬物依存研究部 部長の松本俊彦医師は、その一言について切実な薬物依存者の訴えであったと、その苦悩を汲み取られていました。
他の薬物依存者からも「これでやっとクスリがやめられる。もう家族に嘘の上塗りをしないでいい。そう思ったら、ホッとした。」という、逮捕されたことを救いに感じる声を、治療を通じて聞いてこられたそうです。
更に、高知東生さんが、逮捕時に所持していた薬物量は40回分の分量と非常に多く、バイヤーとして組織的に働かされていた可能性もありました。
自分の意志では断薬も出来ず、密売にも加担をさせられエスカレートする環境下で、葛藤を続けられていたことが想像出来ます。
引用元:ダ・ヴィンチニュース
●毛穴が開き、脳からよだれが出る様な魔力
2016年に逮捕をされた、NHKの9代目元歌のお兄さん杉田あきひろさんは、麻薬の恐ろしさをこう語っています。
20代の頃、覚せい剤とは知らずに友達の勧めで「エス」という麻薬を服用されました。
驚くほどの快感に蝕まれましたが、友達が逮捕をされたことで入手が出来ずに足を洗えたそうです。
その後に、ミュージカルで成功し、歌のお兄さんを勤めあげて引退した後に、再び麻薬に出会います。
断薬から約10年が経過したある時に、バリ島に遊びに行った際に「はっぱがあるよ。エスがあるよ」と現地の売人に誘われました。
長らく触れずに来たにも関わらず「エスと聞いて、毛穴が開いて脳からよだれが出る感じがした。」と、抑えがたい麻薬の衝動の強さを語っています。
麻薬がもたらす限度を超えた快刺激は、体験した方にしかわからない境地だと思います。
私にはそんな危険な世界にアクセスする機会もなく、味わったこともないので客観的に聞く事ができますが、他人ごととは思えません。
もし、薬物に容易に触れる環境があり、一度でも知ってしまえば、抜け出すことが容易ではないと思います。
●見せしめで切り捨てて終わらない人生
世間ではピエール瀧さんへの期待と失望からの批判が相次いでいます。
才能があるだけに本当に惜しくて残念な想いはありますが、「見せしめに厳罰化」して切り捨てるという風潮には疑問を感じます。
「意思の弱さ」を批判することは、薬と接する機会があり、使用をしたうえで克服が出来た人でもなければ、容易には出来ないと思います。
マスコミ報道では薬物使用も、精神疾患による事件も、逮捕をされれば人生が終わりで、批判をして切り捨てられてしまいます。
しかし実際には、逮捕後も人生は続き、医療的なケア、福祉的なケアが行われて、社会復帰に向けて歩みを続けていかれるのです。
●ワイドショーの後日談
私が勤めていた、行政の委託相談支援事業所ではマスコミを騒がせた事件の、その後の社会復帰支援を垣間見ました。
報道では過去の事件簿だけで、語られることのない、その後のエピソードです。
過去に刑事事件を起こして懲役を終えた方の中には、社会復帰への支援を要する方がおられます。
それをサポートする役割として「社会復帰調整官」という職種があり、弁護士、行政の専門職とともに、人生を再設計する支援が行われています。
ある程度の支援の枠組みが整えられると、福祉事業所などに依頼があり人生の再設計を支援する機会が与えられるのです。
報道では凶悪な犯罪者の様に報じられていた方でも、お会いすると非常に真面目に自分と向き合い、過去を清算してこれから歩んでいこうとされている姿に感銘を覚えました。
●薬物依存克服のために一日一日を闘っている芸能人
薬物依存の方に対しては、ダルク(DARC)という組織が全国的に支援を行っています。
ダルク(DARC)とは、
ドラッグ(DRUG=薬物)のD
アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA
リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR
センター(CENTER=施設、建物)のC
を組み合わせた造語で、薬物依存から解放されるためのプログラムを、医療、司法、行政、福祉の支援を通じて行っています。
薬物依存症は、再犯率が極めて高いものです。しかし、適切なプログラムによって回復していくことが可能なのです。
リンク先:日本ダルク
薬物を体験して乗り越えて来たピア(仲間)な経験を交流して、規則正しい生活習慣の中で薬物脱却に向けて、支援が行われています。
先ほどお伝えした、元歌のお兄さん杉田あきひろさんも、保釈後に長野のダルクに入所をして断薬の支援を受けられていました。
規則の厳しい生活の中で不自由さを感じながらも、自分を見つめ直し、お世話になった方々への謝意を感じながら、復帰支援に勤しまれていました。
1980年代~90年代に一世を風靡して薬物で逮捕された、あの田代まさしさんも出所後はダルクでリハビリを受けて、現在はスタッフとして自身の経験を公演活動など語り活躍をされています。
2016年に逮捕をされた元プロ野球選手の清原和弘さんは、薬物と関わる環境から離れて2週間に1度通院を行いながら、コツコツと療養をされています。「一日一日が克服との闘い」と自分を律して努力を続けられています。
その甲斐あって、先日の3月6日に厚生労働省が主催する「誤解だらけの依存症㏌東京」というイベントに登壇をして薬物依存で苦しむ方々へ体験を語りました。
マスコミで報道されないその先で、後悔や孤独に向き合いながら、闘っている人達がいるのです。
●特別に弱い人間ではなく、自分に触れる機会がなかっただけ
ピエール瀧さんをはじめ、薬物に触れてしまった方々が特別に弱く、私達と何かが違ったわけではありません。
ただ、私には幸いにして薬物に触れる環境がなく、幸いにして知らずに済んだだけだと思います。
薬物の快刺激を知ってしまい、アクセスできる環境があり続けることの怖さは、計り知れるものではなく、自分であれば違った結果になるとは言い切れません。
明日は我が身と考えて、私達が経験する代わりに人生を見せてくれる芸能人の方々には、誹謗中傷の前に学ばせて貰うことがあると思います。
人がこの世に産まれてくるのは、芸能界や社会で表舞台に立ち続けることだけではありません。
命があるということは、表舞台も裏部隊も、成功も過ちも経て、学びを得るために生かされ続けているのだと思います。
ピエール瀧さんの人生は、芸能界という表舞台からは一時姿を消したとしても、これからも続き人が味わったことがない誘惑を断ち切るための闘いに向かって、逮捕を機会に努力をしていかれることでしょう。
このニュースを個人の批判にとどめずに、薬物に繋がる社会構造の怖さを学び、絶対に手を出してはいけないことを知る為に役立てて貰いたいと思います。
そして、不幸にも薬物に触れる機会があってしまった方々には、治療と支援の中で立ち上がる努力を、前向きに受け取れる社会に進むことを願います。
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