アメリカ、テネシー州メンフィスで、12歳の少年が核融合炉を自作してしまったようです。
ジャクソン・オズワルド君は、13歳になる誕生日の前日に、1年半という短期間で核融合炉を完成させました。
当然、マニュアルなどがあるわけではないので、必要な知識はインターネットで情報を集めて、わからないことを技術者に質問をしながら情報を集めたそうです。
研究開発に必要な設備は、親に自室をリフォームしてもらい、パーツはオークションサイトで取り寄せて、取扱説明書のない組み立ては、技術者に質問をしながら製作していきました。
両親はその分野の専門ではなく、こどもが何をしているか?詳しくは知らなかったそうです。
安全管理にだけ気をつけて専門家の指導を受けて貰い、製作はジャクソン君の自力で仕上げていきました。
完成したのは、13歳になる1時間前、12歳で核融合炉建設という最年少記録を更新しました。
●それまでの最年少サイエンティスト
過去の最年少記録は2008年に14歳で核融合炉を完成させたテイラー・ウィルソン君でした。8歳でロケットをつくった天才少年は、自身の核融合炉製作について非常にわかりやすい記録をオープンな情報にしながら、当時の最年少記録を打ち立てました。
その後、2014年にイギリスで、ジェイミー・エドワーズくんが、核融合炉でヘリウムを生成する記録をつくりました。
それが、早くも昨年2018年1月に12歳という最年少記録が、ジャクソン・オズワルド君によって塗り替えられました。
ジャクソン君は、それまでゲームが趣味で多くの時間をゲームに費やしていましたが、テイラー・ウィルソン君のビデオに刺激を受け、ゲームに費やす時間と情熱をサイエンスに注いだのです。
●最年少記録より重要な礎
結果として、ウィルソン君の記録を更新した形になり、その偉業に非常にホットな話題が報じられる中ですが、私はその基礎を築いた、テイラー・ウィルソン君の功績に深く感銘を受けます。
それは、ウィルソン君が受けて来た教育環境と、現在23歳になる彼が社会の為にその能力を役立てる為に奮闘を続けている姿からです。
これからも、後世の人にとってわかりやすくかみ砕かれた情報の共有によって、最年少記録は更新をされていくと思います。
しかし、そこで重要なのは最年少記録よりも、情報をいかに、人の為に、社会の為に、活用出来る精神を持っているかだと思います。
それが、ギフテッド教育の重要性だと思います。
ジャクソン君がギフテッドであるかどうかは、ニュースソースが少なくて語れませんが、ウィルソン君は「デビットソンアカデミー」という、国営のギフテッドスクールで特別教育を得て「天性の能力を国家的に養成をされた天才」です。
●アメリカの公的天才養成学校「デビットソンアカデミー」
「デビットソンアカデミー」とはアメリカにおいて、国としてギフテッドを認め能力を伸ばすために特別教育を促している学校です。
標準IQで145以上の高スコアが求められ、対象学年は小学校6年生~高校3年生ですが、大学受験相当の試験で高得点をおさめられる学力が求められます。
非常に狭き門となっているのですが、パスをすると学費無料で、発達の凸凹の特性に配慮しながら、知的な才能を開花させ、社会で活躍をする為の人間力を、個別カリキュラムで受けられるのです。
PLP(Personalized Learning Plan)という、個人別の学習カリキュラムが、本人の能力、ニーズ、特性、両親の要望、教師、スタッフとの間で計画されて、学年の枠に縛られない、学習カリキュラムとして提供されます。
能力の凸凹によって、小学校6年生~高校3年生相当の授業が、学年ではなく能力でグループ化して分けられています。特化している分野では大学の専門教育クラスの授業も受けられて、高度な知識を追求出来ます。
国家によるエリート選別教育の様ですが、エリートという「特権意識とは逆」の感覚を身に着けることにも重視がされているのです。
能力を社会で活かすためにはバランス感覚が必要であり、他人と協調すること、敬うことを、教育ミッションの大きな柱としています。
つまり、社会的スキル・情動的スキルの育成が重視されているのです
●「道義」「誠実」が「知力」よりも上位にある価値観
デビットソンアカデミーの目指す教育理念の基本的価値観は、知識の探求よりも、道徳的な学び、人間関係、礼節を重視しています。
デビットソンアカデミー Core Values(基本的価値観)より 抜粋
引用元:デビットソンアカデミーHP
「責任感」
・人と適切にコミュニケーションを取り、説明責任をもつ。
・忍耐強く、自制心を働かせる。
「誠実さ」
・自他ともに正直になる。
・公平さと真実をまもることへの勇気をもつ。
「バランス」
・柔軟で弾力的な態度。
・師から学ぶ姿勢。
「リーダーシップ」
・自分の立場に責任を持ったリーダーシップを学ぶ。
・他人のリーダーシップを認め、尊重する。
・家族、地域など、関わる人々をより良くする為のリーダーシップを学ぶ。
「尊敬」
・礼儀正しく、親切に行動をする。
・異なる視点を理解し、自分の考えだけが正しいと思われないことを受け入れる。
・自身の成長とともに、社会への貢献を追求する。
基本的価値観の中「知識の追求」という項目もありますが、当たり前なことなので割愛をしました。
私が非常に感銘を受けて先進的に思えたのは「知識の追求」が1番ではなく、6つの価値観の中では5番目に記載されており、社会性、情動性の理念の方が重視をされているという点です。
ギフテッドの高い能力は、使いようによっては、社会を進める力にも、混乱をもたらす脅威にもなります。
その能力を伸ばしながら、個人主義の目的達成ではなく、友情、愛情に育まれ、誠意、敬意、礼節などを学ぶことで、人々の為に役立つ能力に昇華出来る教育を目指しているという点です。
●ギフテッド教育が育てた良心
そして、その教育の成果は、その後のウィルソン君の行動に表れています。
2011年17歳で「核テロ対策のために、兵器の放射線検出器」を開発して、インテル国際学生科学フェアで受賞をしました。
そして、当時のオバマ大統領と直接対談し、国土の安全保障のために研究内容を直接話して平和に貢献をしています。
核科学者として、平和のための反テロリズムに貢献をすることを目指しつつ、原子力技術の有効活用を目指しています。
昨年2018年には、来日をして医療・エネルギー・宇宙探査を超える分野への原子力技術活用の展望も語っています。
14歳で核融合炉発明!科学の天才テイラー・ウィルソン
引用元: Gifted Education
●受け継がれる良心
今回、最年少記録を打ち立てたジャクソン・オズワルト君は、そんなテイラー・ウィルソン君に触発をされて、サイエンスに目覚めました。
ジャクソン君が、交流をしたインターネットサイトは、核融合研究団体「Open Source Fusor Research Consortium」というサイトで、アマチュア物理学者達が自由に情報を交流しあっているオープンスペースです。
必要なパーツは「eBay」というオークションサイトで集めました。政府機関で扱っていたパーツの型落ちなどが出回っており、案外、安価で落札出来たようです。
費用面は両親に工面をして貰ったのですが、部屋を研究棟に改造しパーツを集める費用としては安価で1万ドル(約110万円)で賄えました。
取り扱い説明のない部品の組み立てには大変苦労をしましたが、ネット上で物理学者との交流を通じてトライ&エラーを重ねて約1年半で、見事に核融合炉を完成をさせました。
その研究結果を核融合研究団体「Open Source Fusor Research Consortium」に投稿して、情報共有し、そのサイトの管理人リチャード・ハル氏によって実証をされました。
ジャクソン君は情報を収集する中で先人達が「何を目的として」この技術を研究したかを考えて、クリーンなエネルギーの開発を目指したそうです。
この偉業は昨年2018年1月19日の出来事で、現在ジャクソン君は14歳となっています。
その後のジャクソン君の動きとしては、自分の経験を元に科学技術者が学びの機会を得る為に、団体を設立してさらに若いサイエンティストに道を拓いているそうです。
Teen builds working nuclear fusion reactor in Memphis home
引用元:FOXNEWS
●ギフテッド教育の体現で日本の価値観に風穴を!!
このニュース。
単なるギネス更新の様な話で捉えると、この先も更新されていくであろう最年少記録の通過点でしかないと思います。
しかし、ギフテッド教育を受け社会性・情動性を身に着けた天才が、高い技術とともに志を伝播したのあれば、興味深いことです。
そして今後も、ギフテッド教育を受けた方々が社会に貢献していく中で、ギフテッド教育の真価を世界に伝えてほしいと思います。
与えられた能力を、
迫害されることなく前向き受け入れられ
愛情・友情に支えられる関係性のなかで
個人の知識・スキルを伸ばし
社会を進歩させる存在に成長をしていく
ギフテッド教育の必要性を世界が認めることによって「ギフテッド・天才など存在してはならない」日本の価値観に風穴があけられる日を望みます。
●10代が「核」を扱える情報化社会のこわさ
しかし、同時に個人レベルで核融合炉がつくれる情報環境には危惧を覚えます。
マニュアルが整備されていく中で、製造のハードルが下がり誰にでも容易につくれるプラモデルの様になるのではないかと思います。
そして、危険なプラモデルをつくる最年少記録を争う中で、悲劇が起こる可能性をおそれます。
なので、もう「核」関連の最年少記録の更新はこれぐらいにして、むしろ厳密な情報を管理が必要ではないでしょうか?
例えば、その技術を、何のために?どの様に社会に役立てるか?を考えられる人にだけ、開示出来る仕組みづくりなど、
幸いにしてジャクソンくんは「先人のサイエンティスト達の目的や想い」を汲み取れる人だったので、社会に役立つ研究へと進めてくれそうです。
ただ、これ以上に低年齢化が進むと、洗練されていくマニュアルによって技術を再現出来たとしても「人々のために役立つ」という概念が理解出来ずに、安易に製造が行われていくことを危惧します。
インターネットによる、情報の共有は国家レベルの研究を家庭で行えるような進歩をもたらせました。ただ、誤れば都市を滅ぼすようなレベルの研究開発が出来てしまう段階になると、情報を扱う人間の資質を厳格に問う管理も、今後は必要になってくるのではないでしょうか?
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