このtweetの回答を求めて、就労継続B型事業所で勤務経験のある現役の支援者【仲しんいち】さんに執筆をご依頼させて頂きました。
にほんブログ村
発達障害ランキング
最低賃金時給とB型の工賃の差
平成31年1月現在の東京都の最低賃金は時給1013円である。((厚生労働省東京労働局HPより)
対して東京都内の就労継続支援B型事業所の平均工賃は234.6円(平成30年実績、東京都HPより抜粋)
就労継続支援B型の通所者で、1ヶ月で手元に届くのは2万円程である。
障害者によっては、この工賃では生活できないとの声が殺到している。
B型事業所の成り立ち
就労継続支援B型は、古くは【作業所】と呼ばれ、障害者が通う場所としてはじまった。現在に至るまで、どのような道を辿ってきたのだろうか。
作業所は、当初は特別支援学校(旧養護学校)の卒業生の居場所として養護学校教諭や家族が資金を集め設立したのが始まりとされる。
その後草の根で設立する動きが1960-1970代に全国に広まった。この作業所は、現在のように国の法律で定められた福祉施設ではない無認可施設であった。
無認可施設ではあったものの、都道府県、市区町村独自の補助制度を作った自治体もあり、徐々に重要な社会資源として定着した。
その後、障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)制定により、多くの作業所は現在の就労継続支援B型へ転換を行い、法内施設となった。
就労継続B型の法的な位置づけ
就労継続支援B型は訓練等給付の「就労継続支援」の枠組みに包括されている。
A型は「雇用型」、B型は「非雇用型」である。
利用する者にとっては、A型は工賃に最低賃金が適用され、B型は最低賃金が適用されない(福祉的就労)、という違いがある。
その違いが「工賃が安い」というイメージをより強くしていると言えよう。
障害福祉サービスは、利用者の通所日数や提供したサービス内容に対して、事業者に報酬が支給される。この報酬は国や都道府県が補助の上市町村が負担する。
作業で支払われる賃金・工賃は、利用者が作業で得た工賃から支払わなければならない。
行政からの報酬は施設の運営費や職員の人件費等に使うことはできるが、利用者の工賃に回すことはできない。
これは法で定められていることだ。
職員は作業を提供する場合、作業の納期と利用者の障害の程度と能力に応じた仕事を選ぶ必要がある。正確な作業ができる者、不安定な体調の者、集中力が続く者、利用者の状況に配慮して作業を進行していくことが求められる。
基本、難易度が高く納期が短ければ、報酬は高いが、作業の難易度が低ければ、作業量が少なければ、それだけ業者から受け取る工賃も少なくなることになる。
工賃アップを目指しながらも困難な理由
工賃アップについては、施設職員は誰もが思っていることだろう。
だが、報酬の高い、難易度の高い仕事を請け負っても、作業が終わらず納品できなければ問題である。「楽に仕事ができ、給料が多くもらえる」ことは一般企業も難しいことなのだ。
また能力の高い利用者は、一般就労に向けてA型や就労移行支援に移る、就職することで退所していく。
能力の高い利用者が少なくなると、その分作業量が落ちていくのである。
行政は工賃補助は出来ず、提供出来るのは仕事だけ
市町村が工賃を補助することはできないが、地元企業に作業請負を促し、役所の喫茶スペースや売店を設け、就労継続支援B型に委託をするといったケースは数多く見られる。
工賃を補助するというよりは、作業=仕事を提供することに重きを置いている。
その他、工賃向上の取り組みを行う職員の配置に加算を設ける、作業に必要な機器購入の補助といった制度はあるものの、作業から発生した報酬=工賃が支払われるという仕組みは利用者にとっては変わらないことである。
社会福祉の世界は、時代の考えや価値観によって日に日に変わっていく。就労継続支援B型もまた、時代に即して変化していくことだろう。
著者紹介: 仲しんいち
社会福祉士、精神保健福祉士。
障害者福祉(最近は精神障害、発達障害者支援が主)支援者。
社会福祉、特に障害者に関わる情勢について語ります。
現場のリアルな内情と、B型事業所の性質から、この低賃金が差別的な待遇ではないという理由を説明頂きました。
ただ、専門職同士では読み慣れているのですが一般的にはわかりにくい福祉用語、法律用語の多様と、強めの語気表現については、お詫びを申し上げたいと思います。
不勉強であった私に向けられた戒めだとご理解をお願い致します。
発達障害ランキング
ADHD(注意欠陥・多動性障害)ランキング
にほんブログ村