多分野に学びを広げる人は、どうやって応用力を育てているのか
一つの分野で高い力を発揮する人だけでなく、複数の分野で成長していく人がいます。
言語、論理、音楽、空間認知、身体感覚、対人理解、内省など、一見すると別々に見える力を、横断的に伸ばしていく人です。
私は、その背景には「ある分野で得た学びを、別の分野へ応用していく力」があるのではないかと考えています。
たとえば、社会の中で学んだ法則を芸術に応用する。
英語で学んだ構造を音楽に応用する。
数学で学んだ関係性を歴史理解に生かす。
一見ばらばらに見える物事の中から共通点を見つけ出し、別の分野でも使える形に変えていく。
私は、この働きが多分野的な成長を支えているのではないかと感じています。
その理解に近づく言葉として、私は「ニューロダイバシティ」と「抽象化」という考え方に強く惹かれてきました。
これは学術的に断定した説明というより、私自身の体験と読書を通して形づくられてきた一つの仮説です。
本記事では、その仮説をもとに、分野を超えて働く応用力について考えてみたいと思います。
ニューロダイバシティと応用力
海外では、発達障害の特性を単に欠如としてではなく、「ニューロダイバシティ(神経の多様性)」として捉える考え方があります。
私はこの視点に触れたとき、特性のある脳の働きの中には、一つの分野で得た知識や経験を別の分野につなげやすい側面があるのではないかと考えるようになりました。
平たく言えば、それは「応用力」です。
もちろん、すべての人が同じ形で多分野に発展するわけではありません。
ただ、ある人は一つの経験から多くを学び取り、その学びを別の領域へ移し替えることができます。
社会で学んだ法則を支援に生かす。
対人関係で学んだ距離感を文章構成に生かす。
歴史から学んだ構造理解を現代社会の見立てに生かす。
このように、異なる分野の間に橋をかける力があるとき、人は一つの学びから複数の成長を生み出せるのではないでしょうか。
私は、その橋をかける働きこそが「抽象化」だと考えています。
抽象化とは何か
抽象化とは、目の前の具体的な出来事から、時代や状況を超えて働く共通の法則を取り出すことです。
私たちは日常の中で、目の前の出来事に強く引きつけられます。
しかし、物事を深く理解しようとするなら、細部に埋もれるだけでは足りません。
少し視点を引いて、
・何が起きているのか
・そこにどんな条件があるのか
・誰と誰の利害が関わっているのか
・どんな背景や心理が動いているのか
・原因と結果はどうつながっているのか
といった構造を見ていく必要があります。
私はこの感覚を、グーグルアースのような視点に近いものだと感じています。
地上で見ていると、目の前の道や建物しか見えません。
しかし、視点を少しずつ引いていくと、町の配置、市全体の形、県や国との位置関係が見えてきます。
細かな情報は見えにくくなる一方で、全体の構造はむしろ見えやすくなります。
抽象化もそれに似ています。
細部を捨てるのではなく、全体を理解するために必要な要素を選び取り、共通する法則を見つけていく作業です。
その法則が見つかると、目の前の出来事だけでなく、別の分野にも応用できるようになります。
おわりに
私は、多分野に伸びる人の背景には、単なる知識量ではなく、一つの学びを別の領域へ移し替える力があるのではないかと考えています。
その力を支えているのが、ニューロダイバシティという視点であり、抽象化という思考の働きです。
次の記事では、この抽象化の力がどのように兵法書や古典の読み方につながるのかを考えてみたいと思います。




