きずなグループ問題は、何が問題だったのか③

障害者雇用と働き方の再設計
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障害者雇用のお金の流れ——納付金・調整金・助成金は何のためにあるのか

第1話では、きずなグループ問題を、単なる不正受給事件としてではなく、障害者雇用の空洞化という視点から考えました。

きずなグループ問題は、何が問題だったのか①|不正受給と、障害者雇用の空洞化を考える入口として
きずなグループ問題を、公的情報をもとに整理します。不正受給の問題を一事業者の問題で終わらせず、障害者の「働く」が数字や報酬に変わる構造、障害者雇用の空洞化という視点から考えます。

第2話では、就労移行支援体制加算を中心に、
「就労したこと」が報酬になる仕組みを整理しました。

きずなグループ問題は、何が問題だったのか②就労移行支援体制加算と、「就労したこと」が報酬になる仕組み
きずなグループ問題の中心にある就労移行支援体制加算について整理します。就労継続支援A型の雇用契約と福祉サービス報酬の二重構造、6か月定着が報酬になる仕組み、そして「就労したこと」が本人の働く意味から離れていく危うさを考えます。

制度上は就労したことになる。
数字上は実績になる。
報酬上は加算になる。

しかし、その人にとって意味ある仕事や役割があったのか。
働く経験が、次の可能性へ開かれていたのか。

そこを見なければ、就労支援は形だけになってしまいます。

今回の第3話では、少し視点を広げます。

きずなグループ問題そのものは、直接には就労継続支援A型と就労移行支援体制加算をめぐる問題です。
しかし、この問題を考えていくと、障害者雇用全体にある数字とお金の流れを見ないわけにはいきません。

法定雇用率。
納付金。
調整金。
報奨金。
助成金。

これらは、本来、障害のある人の雇用を進め、働き続けられる職場を作るためにあります。

けれど、そのお金の流れが、本人の役割づくりではなく、雇用率や実績を整える方向へ流れたとき、障害者雇用はまた別の形で空洞化していきます。

今回は、その構造を整理します。

障害者雇用には、なぜお金の仕組みがあるのか

まず確認しておきたいのは、障害者雇用に関するお金の仕組みそのものが悪いわけではない、ということです。

むしろ、必要な仕組みです。

障害のある人を企業が雇用するには、何もしなくても自然にうまくいくわけではありません。

業務の切り出し。
職場環境の整備。
通勤や勤務時間への配慮。
上司や同僚の理解。
支援者との連携。
体調や障害特性に応じた働き方の調整。

こうしたものが必要になります。

企業の善意だけに任せていては、障害者雇用は広がりにくい
だから、制度として雇用を促し、企業間の負担を調整し、必要な環境整備を支えるために、お金の仕組みが作られています。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、いわゆるJEEDは、障害者雇用納付金制度について、障害者を雇用する事業主の経済的負担を調整し、障害者の雇用水準を引き上げるための制度として説明しています。

つまり、本来のお金の流れは、こうです。

障害者を雇用する企業を支える。
職場を整える。
雇用の機会を増やす。
働き続けられる環境を作る。

そのために、納付金や調整金、報奨金、助成金があります。

問題は、お金があることではありません。

問題は、そのお金が、
職場を変えるためではなく、数字を整えるために使われてしまうことです。

法定雇用率には、企業を動かす圧力がある

法定雇用率とは、一定規模以上の企業などに対して、障害のある人を一定割合以上雇用することを求める制度です。

現在、民間企業の法定雇用率は2.5%です。
対象となる企業規模にも基準がありますが、ここで重要なのは細かな人数要件そのものではありません。

大事なのは、法定雇用率があることで、企業に
「障害者雇用を進めなければならない」
という明確な圧力が生まれることです。

そして、その圧力は、一定規模以上の企業ではお金の負担としても現れます。

常用労働者が100人を超える企業で、法定雇用率を満たしていない場合、つまり、制度上「雇う必要がある障害者数」に達していない場合、不足1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納める必要があります。

たとえば、

不足が1人なら、年間60万円。
不足が5人なら、年間300万円。
不足が10人なら、年間600万円。

これは法律上の「罰金」というより、障害者を雇用する企業と、雇用していない企業との経済的負担を調整するための納付金です。

ただ、企業側から見れば、雇用率を満たせなければ毎年発生する重い負担として意識されます。

逆に、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合、逆に、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、超過1人につき月額2万9千円の障害者雇用調整金が支給されます。

超過が1人なら、年間348,000円。
超過が5人なら、年間1,740,000円。
超過が10人なら、年間3,480,000円。

隠密:楊戩
隠密:楊戩

めちゃ、美味しい話やな。そりゃまぁ、社会的意義より「うまいこと達成する方法」を探したくもなるわな。

つまり、障害者雇用には、未達成なら納付金を納め、一定以上雇用すれば調整金や報奨金が支給されるという、経済的な誘導の仕組みがあります。

ここで「飴と鞭」という言い方をすると少し強くなりますが、企業にとってはかなり分かりやすい圧力と誘因になっています。

もちろん、この仕組みそのものが悪いわけではありません。
障害者雇用を企業の善意だけに任せず、社会全体で進めるためには、こうした制度的な後押しが必要です。

問題は、その圧力と誘因が、
「どうすれば本人が働き続けられる職場を作れるか?」
ではなく、
「どうすれば雇用率を満たせるか?」
へ向かってしまうことです。

本来、お金の仕組みは、企業の中に仕事を作り、環境を整え、障害のある人が働き続けられる職場を広げるためにあります。

しかし、未達成なら納付金、達成・超過すれば調整金や報奨金という構造だけが前に出ると、企業はどうしても「雇用率を満たす方法」を探しやすくなります。

その時、障害者雇用は、本人の役割づくりではなく制度上の数字を整える方向へ傾いていきます。

納付金・調整金・報奨金とは何か

先ほど見たように、法定雇用率には、企業を障害者雇用へ向かわせる圧力があります。

その圧力をお金の面から支えているのが、障害者雇用納付金制度です。

かなり簡単に言えば、障害者雇用納付金制度は、
障害者を十分に雇用していない企業からお金を集め、障害者を雇用している企業や、雇用を進めるための支援に回す仕組み
です。

法定雇用率を下回っている一定規模以上の企業は、納付金を納めます。
一方で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、調整金や報奨金が支給されます。

ここで大事なのは、この制度が単なる罰金制度ではないということです。

障害者を雇用する企業には、職場環境の整備、支援体制づくり、業務内容の調整など、一定の負担が生じます。

その負担を、雇用している企業だけに負わせるのではなく、社会全体で調整する。
そのために、納付金制度があります。

しかし、ここでもやはり、数字が前に出ます。

雇用率を満たしているか。
何人雇用しているか。
不足している人数は何人か。
調整金や報奨金の対象になるか。

制度を運用する以上、数字は必要です。

けれど、数字だけを見てしまうと、
「何人雇ったか」
「雇用率を満たしたか」
が中心になります。

本当に問われるべきなのは、そこだけではないはずです。

その人は、どのような仕事を担っているのか。
職場の中で役割があるのか。
働き続けるための環境があるのか。
本人の力や希望に合った働き方になっているのか。

納付金や調整金の仕組みは必要です。
ただ、その評価の先に、本人の働く実体が見えていなければ、制度はまた形だけになってしまいます。

助成金は、本来何のためにあるのか

次に、助成金について考えます。

障害者雇用に関する助成金は、企業が障害のある人を雇用し、働き続けられる環境を作るために用意されています。

JEEDは、障害者を雇い入れる、職場に定着できるようにする、職場環境を整備する、在宅勤務や就業支援を整えるなど、さまざまな場面を支援する助成金を案内しています。

たとえば、職場環境を整える。
支援者を配置する。
設備や補助具を整える。
通勤や勤務の工夫をする。
本人が働き続けるための体制を作る。

そのような取り組みを後押しするために助成金があります。

ここも誤解してはいけません。

助成金は、悪いものではありません。
企業が障害者雇用に取り組むには、最初に負担がかかることがあります。
配慮や環境整備にはコストも時間もかかります。
現場の理解を得るための工夫も必要です。

そこに公的な支援が入ることは、とても大切です。

ただし、助成金の意味を取り違えてはいけません。

助成金は、雇用率を満たした企業へのご褒美ではありません。
数字を買うためのお金でもありません。

本来は、
障害のある人が働き続けられる職場を作るための投資
です。

そのお金は、本人の働く環境を広げているのか。
企業の中に新しい役割を作っているのか。
現場の働き方を変えているのか。

それとも、ただ雇用率を満たすための費用になっているのか。

この違いは、とても大きいと思います。

企業には「雇用率を満たしたい」圧力がある

企業にとって、法定雇用率を満たすことは重要です。

未達成であれば納付金の対象になります。
企業名の公表や行政指導につながる可能性もあります。
社会的評価にも影響します。
大企業であれば、CSRや人的資本経営、ダイバーシティの観点からも、障害者雇用は無視できません。

だから企業は、障害者雇用に取り組みます。

それ自体は大事なことです。

しかし、ここで問題が起きます。

本来、企業が考えるべきなのは、
「自社の中で、どのような仕事を作るか」
です。

どの業務を切り出せるのか。
どの部署なら受け入れられるのか。
どのような支援体制が必要なのか。
どのような働き方なら、その人が力を発揮できるのか。

そこを考えることが、障害者雇用の本体です。

ところが、雇用率を満たす圧力が強くなると、企業の関心は変わりやすくなります。

「何人採用すればよいのか」
「どうすれば早く雇用率を満たせるのか」
「現場に負担をかけずに達成する方法はないか」
「支援や管理を外部に任せられないか」

こうして、障害者雇用は、職場づくりではなく、雇用率達成の手段として考えられやすくなります。

もちろん、企業にも事情はあります。

障害者雇用のノウハウがない。
現場に余裕がない。
どの業務を切り出せばよいか分からない。
採用しても定着できるか不安がある。
支援機関との連携に慣れていない。

そうした困難は、確かにあります。

だからこそ、企業を責めるだけでは足りません。

必要なのは、企業が障害者雇用を「外で処理するもの」と考えなくてもよいように、企業内で仕事を作る支援を整えることです。

お金の流れが、外部化された雇用へ向かうとき

ここまで、法定雇用率、納付金、調整金、報奨金、助成金について見てきました。

どれも本来は、障害者雇用を進めるために必要な制度です。

障害者雇用を企業の善意だけに任せず、制度として後押しする。
雇用していない企業には一定の負担を求める。
雇用している企業には調整金や報奨金を支給する。
職場環境の整備や支援体制づくりには助成金を用意する。

この仕組み自体は、障害者雇用を広げるために必要なものです。

ただし、制度にお金の流れがある以上、そこにはどうしても「抜け道」や「近道」を探す余地が生まれます。

本来なら、企業は自社の中で仕事を切り出し、職場環境を整え、障害のある人が働き続けられる場を作っていく必要があります。

しかし、それには時間も手間もかかります。

どの業務を切り出せるのか。
どの部署なら受け入れられるのか。
現場の理解をどう得るのか。
本人に合った勤務時間や支援体制をどう作るのか。

そこを一つひとつ考えるのは、簡単ではありません。

一方で、制度上の雇用率は満たさなければならない。
未達成であれば納付金の負担もある。
企業イメージや社会的責任も問われる。

そうなると、企業はどうしても、
「自社の中を変えること」よりも、
「雇用率を満たす方法」

を探しやすくなります。

ここに、障害者雇用が外部化されていく入口があります。

自社の中で仕事を作るのではなく、外部に用意された働く場を使う。
業務や支援、管理も外部の仕組みに任せる。
企業の中に新しい役割を作らなくても、制度上は障害者雇用として成立する。

このような仕組みは、企業にとって分かりやすい選択肢になります。

そこで働いていた本人たちに、メリットがなかったわけではない

ただし、ここで大切なのは、そこで働いていた本人たちの現実を軽く見ないことです。

外部化された雇用や、企業の本体から離れた場所での障害者雇用であっても、そこで働いていた人にとっては、確かに意味があった場合があります。

賃金が得られる。
生活費になる。
家族に頼るだけではない収入ができる。
通う場所がある。
日中活動のリズムができる。
人と関わる機会がある。
「働いている」という実感を持てる。

これは、本人にとって大きなことです。

労働は、まず生活のためにお金を得るものです。
働く意義やキャリア形成は大切ですが、それ以前に、収入があること、生活が成り立つことは切実です。

だから、外部化された雇用で働いていた人たちに対して、
「そんな働き方には意味がなかった」
という言い方はしたくありません。

本人にとっては、そこに経済的なメリットがあった。
生活上の意味もあった。
居場所や役割の感覚があった
人もいたかもしれない。

その現実は、きちんと見なければならないと思います。

だからこそ、問題は見えにくかった

本人にとって一定のメリットがあったからこそ、この問題は顕在化しにくかったのだと思います。

働いている本人にとっては、収入がある。
家族にとっても、日中の行き先や仕事がある。
企業にとっては、雇用率を満たせる。
外部事業者にとっては、事業として成立する。
制度上も、障害者雇用としてカウントされる。

一見すると、誰も大きく損をしていないように見えます。

むしろ、
「雇用率も満たせる」
「本人も働ける」
「企業も助かる」
「支援もついている」

という形に見えます。

だから、問題が見えにくい。

しかし、ここで問わなければならないのは、
本人に短期的なメリットがあったかどうかだけではありません。

きずなで働いていた人のメリットと、障害者雇用制度の形骸化は別問題である

しかし、ここで整理しなければならないのは、本人にとってのメリットと、障害者雇用制度としての問題は別だということです。

きずなの仕組みの中で働いていた人にとって、収入があったこと、通う場所があったこと、働いている実感があったことには意味があったと思います。

そこは否定できません。

労働は、まず生活のためにお金を得るものです。
働く意義や社会参加、キャリア形成は大切ですが、それ以前に、収入が生活を支えていたという現実があります。

だから、そこで働いていた人たちに対して、
「その働き方には意味がなかった」
とは言えません。

ただし、それと障害者雇用制度の目的が果たされていたかどうかは、別の問題です。

本来、障害者雇用制度は、企業の中に障害のある人の働く場を広げるためのものです。

多くの企業が、自社の中にある仕事を見直す。
どの業務なら切り出せるのかを考える。
どのような配慮があれば働き続けられるのかを考える。
障害のある人と一緒に働く経験を、企業の中に積み重ねていく。

その積み重ねによって、障害者雇用は社会の中に広がっていくはずでした。

しかし外部の仕組みに雇用を預けることで雇用率を満たせてしまうと、企業の中は変わりません。

職場の業務は分解されない。
現場の理解も広がらない。
障害のある人と一緒に働く経験も蓄積されない。
企業の中に、新しい役割も生まれない。

制度上は障害者雇用としてカウントされる。
本人にも収入がある。
企業も雇用率を満たせる。

けれど、その一方で、本来目指していたはずの「多くの企業の中に障害者雇用を広げていく」という目的は、弱くなってしまう。

ここに矛盾があります。

本人にとって働いていた意味があったことと、障害者雇用制度が形骸化していたことは、同時に成り立ちます。

だから、この問題は
「本人にとって良かったのだから問題ない」
とも言えません。

逆に、
「制度として問題があるのだから、そこで働いていた本人の経験にも意味がなかった」
とも言えません。

本人の生活上のメリットは否定しない。
しかし、制度として障害者雇用が企業の中に広がらず、数字だけが整っていく構造は問わなければならない。

きずなグループ問題から見えてくるのは、この二つを分けて考える必要性です。

障害者雇用は、雇えばよいというものではありません。
そして、収入があればそれで制度の目的が果たされたとも言えません。

本人の生活を支えること。
企業の中に働く場を広げること。
その両方があって、はじめて障害者雇用は本来の意味を持つ
のだと思います。

障害者雇用は、生活のための収入と、社会の中の役割の両方を見なければならない

障害者雇用を考える時、きれいごとだけではいけません。

「働く意義」
「社会参加」
「本人の役割」
「キャリア形成」

どれも大切です。

けれど、本人の生活から見れば、まず大事なのは収入です。
働いてお金を得ることです。
生活費を確保することです。
家族や制度に頼るだけではなく、自分の収入を持つことです。

そこを抜きにして、
「本来の障害者雇用とは」
「企業の中の役割とは」
と語っても、本人の生活から離れた空論になります。

だから私は、そこで働いていた人たちの経済的メリットや生活上の意味を否定しません。

ただし、そこで止まってはいけないとも思います。

働くことは、収入を得ることです。
同時に、社会の中に役割を持つことでもあります。

障害者雇用は、その両方を考えなければなりません。

本人の生活を支える収入。
その人が担える仕事。
職場の中での役割。
企業の中で働き続けられる環境。
そして、社会全体に障害者雇用を広げていくこと。

この両方を見なければ、制度はどちらかに偏ります。

収入だけを見れば、雇用率を満たす外部化された仕組みでもよいように見える。
役割だけを語れば、本人の生活の切実さを見落とす。

だからこそ、きずなグループ問題から障害者雇用を考える時には、
本人にとっての生活上の意味と、
制度全体としての障害者雇用の意義

を分けて、両方を見る必要があります。

きずなグループ問題と、障害者雇用制度は同じ問題ではない

ここで、ひとつ大事な整理をしておきます。

きずなグループ問題と、法定雇用率・納付金・助成金・外部委託型雇用の問題は、制度としては同じではありません。

きずなグループ問題は、直接には就労継続支援A型や就労移行支援体制加算、不正受給と判断された報酬請求の問題です。

一方で、法定雇用率や納付金、調整金、助成金は、主に一般企業の障害者雇用を促進するための制度です。

ここを混同してはいけません。

制度は違います。
お金の流れも違います。
行政上の枠組みも違います。

ただし、共通する危うさがあります。

それは、
本人の働く意味よりも、制度上の数字や報酬が前に出ること
です。

A型では、就労移行支援体制加算の実績が前に出る。
一般企業の障害者雇用では、法定雇用率の達成が前に出る。
外部委託型・農園型では、雇用率を満たすことが前に出る。

制度は違っても、本人の仕事や役割が後ろに下がると、同じような空洞化が起きます。

制度上は成立している。
数字上は整っている。
報酬やお金の流れもある。

けれど、本人にとって意味ある仕事が見えない。
企業や社会の側も変わっていない。
働く経験が、次の可能性に開かれていない。

この共通点を見なければ、きずなグループ問題を本当に理解したことにはならないと思います。

お金は、数字ではなく職場を変えるためにある

障害者雇用に関するお金の仕組みは、本来、必要なものです。

法定雇用率は、企業に雇用の責任を求めるためにあります。
納付金制度は、企業間の負担を調整するためにあります。
調整金や報奨金は、雇用している企業を支えるためにあります。
助成金は、障害のある人が働き続けられる環境を整えるためにあります。

これらをすべて否定する必要はありません。

むしろ、必要です。

けれど、お金の流れが、本人の働く意味から離れてしまうと、制度は本来の目的を失います。

雇用率を満たすために人を雇う。
調整金や助成金を得るために形を整える。
外部の仕組みを使って、企業の中を変えないまま数字だけを満たす。

そうなってしまえば、障害者雇用は空洞化します。

本当に必要なのは、数字を整えることではありません。

企業の中に、意味ある仕事を作ることです。
その人が担える役割を見つけることです。
働き続けられる環境を整えることです。
必要なら、仕事そのものを分け直すことです。

お金は、そのために使われるべきです。

障害者雇用のお金は、数字を買うためのものではありません。
職場を変えるためのものです。

この視点を失ったとき、障害者雇用は制度としては進んでいるように見えても、本人の人生からは遠ざかっていきます。


次回へ

今回は、障害者雇用に関わるお金の流れを整理しました。

法定雇用率。
納付金。
調整金。
報奨金。
助成金。

これらは本来、障害のある人が企業の中で働き、働き続けられる職場を作るためにあります。

しかし、その仕組みが「雇用率を満たすこと」だけに向かうと、障害者雇用は形だけになってしまいます。

次回は、その問題がより見えやすくなる外部委託型・農園型障害者雇用について考えます。

農業が悪いのではありません。
外部支援がすべて悪いのでもありません。

問題は、企業が自社の中に仕事を作る責任を外部化し、雇用率だけを満たすことができてしまう構造です。

きずなグループ問題を、A型の不正受給だけで終わらせないために。
障害者雇用を、制度上の数字だけで終わらせないために。

次回は、外部委託型・農園型障害者雇用の問題を、企業が「仕事を作る責任」を手放す構造として考えていきます。

参考にした資料・報道

本記事では、障害者雇用に関する制度の基本的な仕組みや、きずなグループ問題の背景を確認するため、以下の資料・報道を参照しました。

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